集落に住み着いてしばらくした頃、曽祖父は突然、村人の「治療」をはじめました。それがあまりにスゴ技だったので、たちまち評判になり、遠方からも人々が押し寄せたので、家の前には、いつも長い行列ができていたそうです。
彼が行う治療は、道具は一切使わず、何かをぶつぶつと唱えながら、指先で触れるだけで、イボやタコのような小さなものから、大きな腫瘍や皮膚癌のようなものまで、体の表面にできたものを簡単に取り除くことができました。祖母はその治療の様子を「イボはぽろぽろと取れるし、タコは中から何かがでてきて治る。もっと大きな鏡餅のようなデキモノだって、お父さんが指先でつかんでひっぱると、そのまま取れてしまう」と、よく僕に話してくれました。
当然、医者の資格など持っていなかったはずですが、謝礼や付け届けを拒まなかったので、ずいぶんな稼ぎがあったようです。
曽祖父については他にも不思議な話がいろいろ伝わっていて、例えば彼の妻である曽祖母は生前「うちの旦那様は、雨が降っても、傘なしで一滴も濡れずに歩くことができた。」と語っていたそうです。この話は、祖母の他、他の多くの親戚も聞いたことがある・・・と覚えていました。
僕に霊感があるのは、曽祖父の血を受け継いだのかもしれません。でも残念ながら僕には心霊手術は無理。イボにもタコにも歯が立ちません。ただ、実を言うと僕自身も、どしゃぶりの雨の中を、なぜか濡れずに歩けたことが何度かあります。やろうと思ってやったわけではなく、なぜ濡れなかったのかもわかりません。逆にやろうと思ってチャレンジしてみてもびしょ濡れになるばかりで全然でダメなのですが、霊感とは別の何かがあるのかも・・・しれません。