早朝の商店街。道の両側にはたくさんのゴミ袋が置かれ、そこから漏れ出た液体が強烈な異臭を放ち、酔っ払いの粗相の残骸があちこちに・・・。子供には全く楽しい場所ではないのですが、僕は、朝食を食べ終わると、大急ぎで幼稚園の園服に着替え、園のお迎えが来るまでの間、誰もいない、その薄汚れた商店街を一人で歩きまわるのが好きでした。
僕はまず商店街と交差する路地の1つを選び、その道端の適当な1点に意識を向けます。それから、ちょっとずつ探るように意識を移動させていくと、やがて「ピカ」っと人の姿が浮かび、同時にその人の思いや感情が頭に流れ込んで来る。それは激しい怒りだったり、悲しみだったり喜びだったり、いずれにせよ、ちょっと強めの「感情の塊」で、それが「どかん」と僕の頭の中に転がり入んでくる。そして、僕自身の意識は、その、「他人の感情」をまわりから眺める。こうして1つの感情を拾うと、僕はその続きを探す。さきほどの路地を進みながら探り、同じ人の感情を探すのです。これを繰り返して、誰かの思考や感情をたどっていく。宝探しのような感じで、それが僕のお気に入りの「遊び」でした。