心霊手術で荒稼ぎした僕の曽祖父。でも彼は生まれつき霊能者だったわけではありません。
曽祖父は、自分がどのように能力を得たのか、その「きっかけ」をよく周囲に話していたそうです。
それは、白装束の老人との遭遇でした。
いつ、どこで、どう会得したのか不明ですが、そもそも曽祖父にはスゴイ特技がありました。それは横笛、いわゆる和笛を吹くこと。実際に聞いた人の話しでは、並みの上手さではなかったそうです。このため、住んでいた村や町はもちろん、その周辺の集落で、祭りや祝い事があると、そこに招かれて演奏していました。
そんなある日、かなり遠くの村から、神社の祭りで笛を吹いてほしいとの依頼があり、曽祖父は、それに応じて、神社の境内で自慢の笛を披露した。改心の出来だったそうです。村人からとても感謝され、手厚くもてなしを受けた曽祖父が、神社の拝殿で、帰り支度をしていると、そこに白装束の老人が現れた。それまで対応してくれた村人達とは違う、その時初めて合う人物だったそうです。その老人は「大変見事な笛の音を聞かせてくれたから、お前に一つ褒美をやろう」と言いました。ただ、肝心の、その後に何があったのかは「老人から能力を授かった」という以外、曽祖父は一切、誰にも話しませんでした。彼は、その理由を「老人から絶対に人に言ってはならない」と口止めされたから・・・と説明していたそうです。
曽祖父はその日から心霊手術ができるようになりました。それがいつの話しで、どこの神社だったかも、その老人が何者で、どうやって能力を授かったのかも、今となっては全くの謎ですが、このエピソードのことは曽祖父自身が、繰り返し語っていたようです。
そして、実は、この老人の言葉にはまだ続きがあります。それは、もし曽祖父が生涯「ある約束」を守ることができれば、彼のその能力は子孫に受け継ぐことができる。というものでした。だから僕にも受け継ぐチャンスがあったことになります。でも、このあと彼の長男である僕の祖父と、孫である僕の父も絡んでちょっとしたドタバタがあり、約束は破綻して、あえなく伝承に失敗。それでも祖父は多少は能力を発揮できたようですが、父はせいぜいイボやタコを直せる程度、そして僕は能力ゼロ。心霊手術は全くできません。まぁ曽祖父の治療の話は、聞くだけでも、ちょっと気持ち悪い感じなので、正直、あんまり残念とは思いませんけれどね。