事故物件に住んだ話(五)

あれ?何か変ですね。部屋に現れた霊は無反応だったのでは? はい。その通り。彼らからは何の情報も得られません。学んだのは別の霊達からです。そういえばこの部屋、事故物件だったのでは? はい。その通り。この後、すぐに展開がありました。じゃ部屋で亡くなった方から学んだの? はい。そうです。・・・でも、彼らだけではないんです。

 

墓地を見つけて数日後、僕が部屋で仕事をしていると、突然、耳元でクスクスと笑う声。この部屋の元の住人、若いご夫婦が、わざわざご挨拶に来られたのでした。といっても奥様の登場のしかたは、かなり衝撃的・・・お腹のあたりで切断された上半身だけの姿で、長い髪を太陽のように広げ、はじけるような笑顔で、上下さかさまに空中に浮かんでいました。霊に不慣れな方がその姿を見たら、きっと恐怖のあまり一目散に部屋を飛び出し、二度と戻れないかもしれません。あの宛名の5人はきっとそんな感じだったのでしょう。でも、この奥様。本当はとても魅力的で茶目っ気いっぱいの女性です。性格も容貌もとても可愛いらしい方で、もし生前の彼女に会ったなら、きっと誰もが一瞬で心を奪われたに違いない。そう思えるような、素敵な女性でした。でも残念ながら彼女は不慮の事故で亡くなります。さらに、残された寡黙で長身でアスリートでイケメンの旦那さんは、悲しみのあまり、ある夜、衝動的に部屋のベランダから飛び降りてしまわれました。この結果、この部屋は事故物件になったのです。でもこの部屋、これで終わりではありません。まだ他にも同居人・・・とても個性的な2人の霊で、彼らはご夫婦より前からここにいたそうです。・・・が、いることが判明。さらに、数カ月後には、事あるごとに、どこからともなく集まってきては大騒ぎをはじめる大勢の「お友達」まで現れるようになりました。こうして、この部屋では毎日にぎやかなドタバタが展開されたのです。その後、どうしても避けられない事情で引っ越すことになってしまいましたが、僕はこの部屋にいた7年間が大好きです。できればずっと住んでいたかった。今でも、心からそう思っています。

 

この部屋での出来事は、いくら語ってもつきません。機会をみながら、また少しづつお話ししていきたいと思います。